2012年6月7日木曜日

賽の目(MAから再掲、数式注意)


 賽の出目とは酔歩ですから、偏っているかにみえる事象は実は正しくランダムであることを反映しているのです。一回振るごとに、期待される結果の平均値(期待値)を実現してしまう出目は、全然ランダムではありません。全部3か4とかの目が出ることになるわけですから。二回とか三回ごとに実現するならいいかといっても、そんなことはないわけです。それこそ偏った周期みたいな出目そのものです。
 つまり、正しい賽を振っていると、しばらくは平均から離れたところでうろうろしています。そんな出目は一方に厳しく、他方に有利と偏って感じられるでしょう。そうこうするうちに平均値へ戻ります。その間は偏りが逆転したように感じられます。が、やはり偏っているように感じるはずです。で、平均値から賽を振り始めて偏りながら平均値に戻ってくるまでの回数はどれだけかというと、n回振って初めて戻ってくる確率
\[P_n=\frac{1}{n+1} {}_{2n}C_n=\frac{(2n)!}{n!(n+1)!}2^{-2n}\]
はnが大きいときにスターリングの公式を用いて階乗を評価すると\(n^{-3/2}\)に比例するので、回数の期待値はおおよそ
\[\sum_n\frac{n}{n^{3/2}}=\sum_n\frac{1}{\sqrt{n}}\]
となります。この和は発散しますから、ほとんどの時間を偏っていると思いながら進むことになります。
 結局、長いゲームほど偏りを感じる時間は長くなってしまいます。偏りの平均がやはりn回振るとして\(\sqrt{n}\)くらいです。1戦で100回振るとして10くらいの偏りは当たり前に起きることになります。終わったときに\(\pm 10\)くらいの間に入っている確率がおおよそ1に近いということでもあります。
 図は有利な目と不利な目が半々として、有利なら1、不利なら−1を加算することを1000回繰り返したもので、開始点かつ平均の0に戻ることわずか数回。上下とも1000の平方根におさまってます。上の二枚は\(\pm\sqrt{n}\)をグラフに追加していますので、偏りはあってもおよそこの範囲に入っていることがわかります。




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